本から明日をつくる

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マーケティングに携わる人は知っておきたい、ファンの育て方~石原夏子『偏愛ストラテジー ファンの心に火をつける6つのスイッチ』

今回紹介するのは、石原夏子『偏愛ストラテジー ファンの心に火をつける6つのスイッチ』実業之日本社)です。

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ここ最近、マーケティング業界ではよく「ファンマーケティング」という言葉が飛び交います。
今の時代、自分・自社の商品・サービスを“偏愛”してくれるほどのファンをいかに育てていくか、それが事業の成功の鍵を握る。
この本ではそう語られます。

では、ファンを育てるためにはどんなことが必要なのか?
この本で紹介されているファンを育てるための6つスイッチについて考えてみましょう。

要約

6つのスイッチ

  • 出合いのよりそいスイッチ
  • 偏愛を深める特別扱いスイッチ
  • 偏愛を維持する言霊スイッチ
  • 脱落を防ぐ仲間スイッチ
  • 自走を促す自分ごとスイッチ
  • ファンを増やす拡散スイッチ

前提:そもそもなぜファンを作ることが必要なのか

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なぜ、ファンを育成していくことが必要なのか。

その理由は端的に言うと、少子化に伴う人口減少により、ひと昔前のように常に新規客を獲得し続けることが難しくなってきているからです。

高度経済成長期ならば、人口もどんどん増えて生活もどんどん豊かになっていたから、「こんないいものができましたよー!みんな買いに来てー!」と言って初めての顧客を集めることが売上UPに繋がっていたりしたわけです。

しかし、人口成長もストップし、生活水準もなかなか上がらない今の時代、新しい顧客を5人見つけるよりも同じ人に5回利用してもらう方がはるかに理にかなっているわけです。

じゃあどうすれば5回利用してもらえるようになるのか。
その一つの答えが、熱烈なファンになってもらうこと、なんですね。

ではそのファンの育て方について、重要なポイントを説明していきましょう。


スイッチのポイント

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この本で紹介されているスイッチを全て事細かに紹介しては分量が膨大なものになってしまうので、ここでは要素をかいつまんで重要なポイントについて紹介しようと思います。

本ではファンを育てるための6つのスイッチ(要約で説明しているもの)として説明していますが、ここではより簡潔にするためファン育成過程を、①ファンのなってもらうステップ(第1章)②ファンとしての愛を強めてもらうスッテプ(第2、3、4章)③ファンとして自走してもらうステップ(第5、6章)の3ステップにして要点をまとめてみます。


①ファンのなってもらうステップ

あなたは何かのファンになった経験はありますか?
もしあったらその時のことを思い出してみてください。

きっと、なんかしらの共感があったのではないでしょうか。
この本では、「わたしのことをわかってくれている」と思ってもらうこと、だと書かれています。

つまり、ファンになってもらうためには、利便性だとか機能とかではなく、これは自分のためにある、わかってくれるんだ、という寄り添いを感じてもらえるかどうかにかかっているということなんです。


②ファンとしての愛を強めてもらうスッテプ

ファンとして愛を強めていく方法は色々あります。
そのサービスや商品の形態によって細かいやり方は別れてくると思います。

ただ全体に共通しやすいこととして、
(1)自分がファンだと認識・発信してもらう
(2)ファン同士の仲間を作る

この2点があると、どんどん愛を深めていきやすくな流のです。

実際野球のファンとか考えても、自分はタイガーズファンだ!って言ってファン同士でドームで一緒に応援している姿がわかりやすいですよね。
あそこまで行けば、なかなかファンから脱落することはありません。

つまり、愛を強めていくための環境を設定してあげる、というのが重要ということなんです。

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③ファンとして自走してもらうステップ

ファンとして自走するということは、ファンの人が自分ごととして常に捉えてくれるようになるということ。

そうなるためには、自分からその商品・サービスに関わっている、貢献している、参加してるという能動的な体験をしてもらうことが重要です。

本に出てきた例で、セブングループはセブンプレミアム向上委員会というコミュニティサイトを設置して、お客様が選ぶ商品の総選挙やお客様のお気に入りランキングの公開など行ったところ、その顧客の平均購入単価は通常の1.5倍になったそう。

実際僕が好きなバンドのライブに行って、限定のTシャツを買って着て参加すると、自分はこのライブを好きなバンドと一緒に作れてる、貢献できるという感覚になります。
ここまでいくと、自分からそのバンドの魅力を他の人に伝えるようになるんです。

皆さんも好きなものは広めたくなる、そういう経験ありませんか?

自走するまで偏愛してくるファンとは、自らその魅力を広めてくれる存在であり、マーケターはそこまで考えてファンを育ていく必要があるのです。


大切なことは、顧客の感情に寄り添って一緒に商品・サービスを作っていくという姿勢

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これまで色々話してきましたが、一番大切なことは、心からファンに寄り添う、ということなんだと思います。
もちろん、ファンを育てるために戦略的な考えができてしまうのは仕方がないかもしれません。

しかしそこに心からファンのことを考える姿勢がなくなってしまうと、ファンの心に寄り添うものでなくなり、きっとファンの人にも感づかれ離れてしまってしまうのではないでしょうか。

マーケターの人は、「どうしたら喜んでくれるか」「いつも使ってくれて、来てくれてありがとう」、という利他精神と感謝の心を常に持っていきたいものですね。

むしろ真のマーケターというのは、小手先の技術ではなく、そういった心の部分が優れた人なのかもしれません。