【書評】AIやロボットが変えるグローバリゼーションの未来~リチャード・ボールドウィン『世界経済の大いなる収斂』
今回紹介するのは、リチャード・ボールドウィン『世界経済の大いなる収斂』(日本経済新聞出版社)の後半です。
前半を読んでいない方は、まずこちらのほうを!
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さて、後半部ではついにヒトの移動コスト、対面コストが下がったときにどうなるか、ということにも迫っていきます。
そしてタイトルの大いなる収斂=みんな同じになっていくという意味とは?
この本は、これまでのグローバリゼーションを捉え、これからのグローバリゼーションを考えるうえでかかせない一冊でした!
要約
これまでのグローバリゼーションのインパクト
前半部分での紹介でも言ったように、グローバリゼーションの進展において3つの移動コストの制約が重要な要因になるという話をしました。
- モノの移動コスト
- アイデア(情報)の移動コスト
- ヒトの移動コスト
の3つです。
そしてモノの移動コストは19世紀前半の産業革命に伴う蒸気船の登場によって、アイデア(情報)の移動コストは1990年代初めのICT革命によって、大きく減少しました。
そのインパクトについてもう少し検討してみましょう。
モノの移動コストが下がり、貿易コストが下がると、先進国に産業が集まり成長を加速させるイノベーションが生まれ始めました。
ただしまだ情報の移動コストは下がっていなかったためイノベーションは先進国にとどまったままでした。
それが1990年代はじめのICT革命によって、インターネットで情報が行きかうようになっていくと情報の移動コストは大幅に下落します。
そうすることで多くの発展途上国が、製造業などのノウハウを手にし、急速な工業化をとげていったのでした。
そうして、大きく分岐した先進国と発展途上国の経済力は、だんだんと収斂の方向へと、つまり同一の水準へとむかっているのです。
最後のコスト、ヒトの移動コストが下がるとき
この本では最後に、テレロボティクスといったロボットの遠隔操作や、テレビ電話のような技術によって人の移動コストが徐々に下がっていくだろうと述べています。
直接人が移動しなくとも、別の国のロボットが自分の指示通りに動いてくれる時代がすぐそこにきてるわけです。
3Dプリンターの登場もそうですし、AI、VRなどによってそういったことは実現されていくでしょう。
そうなったとき、この世界は収斂にむかうのか、それとも再び分岐していくのか。
どこでもものがつくれる、それもコストがなにもかからないとなったら、貧しい国にこそビジネスチャンスが広がるのか、それとも先進国に産業は集中してしまうのか。
個人的には、国自体はどの国にもビジネスチャンスが広がっていると思うけど、国の中でそのチャンスを手にできた人と手にできずに苦しむ人の格差に別れていくのではないかと思っております。
皆さんはどう思いますか?
グローバリゼーションの未来はどうなるのか。
この本はそんな視座を与えてくれる本でした。