”人口ボーナス”って何? これでアジアの経済成長の3分の1が説明できてしまう!
突然ですが「人口ボーナス」という言葉をご存知ですか?
このあまり聞きなれない言葉の現象が、実は1990年に至るまでのアジアの経済発展に深くかかわっていると言われています。
なんで韓国や台湾が急成長したのか。
なんでこれからフィリピンやインドネシアの経済成長が期待できるのか。
こうした経済成長を人口学の観点から見てみると新しい一面が見えてきます。
ちなみにこの人口ボーナスの話は以前紹介した大泉啓一郎著『老いていくアジア』に詳しく記されています。
honkaraasuwotukuru.hatenablog.com
人口ボーナスの仕組み
それでは人口ボーナスとは何なのか。
ざっくり言うと、
たくさん子どもが生まれた世代が大人になって働くようになったとき、そのとき生まれている子ども世代の数が少なくなっている
↓
国内で働ける人の割合が増えるから、経済成長率が上がる
ということです。
まだあんまりピンと来ないかもしれません。
ここで言っている現象はまだまだ貧しかった国から発展し始める段階にあるアジアの国々を前提としていることを今一度強調します。
それを前提としたうえで、経済成長に伴う人口推移グラフにするとこんな感じです。
左の頃はまだたくさん子どもも生まれる(アジアは70年前とかは一つの過家庭に5人くらい子どもがいたと言われています)けど、先進的な医療が入ってきていないからその分たくさんの人が死んでしまう社会(多産多死)です。
だから左の頃は人口増加率は低いですよね。
さて、そこからだんだん医療が発展すると、たくさん子どもが生まれるけど、かつてほど死ななくなる(多産中死)ようになります。
その状態では人口が急増しだし、貧困の悪循環に陥りだします。
そりゃ突然家族が増えてそのぶん生活費もかさむので所得がおいついてこないわけです。
今のアフリカの多くがあてはまる状態ともいえます。
そこで当時のアジアの多くの国がとった策、それは人為的な人口抑制政策です。
中国の一人っ子政策などがすぐ思いつくかもしれませんが、何も中国だけでなく、韓国やタイなど他の国も同じような政策をとったんですね。
そうなると、強制的に中産中死の状態にその国は入ることになります。
そのとき、ちょうど人口抑制が始まる直前にたくさん生まれた最後の世代がいわゆるベビーブーム世代となって多くの人口を占めるようになるわけです。
つまりそのベビーブーム世代の人たちが働くときには、子どもも少なくなっているから、一家に配分される所得も昔のように困ることはなく、お金もたまるようになっていって豊かになる、ということです。働く人の割合もたくさんいるから国としても経済成長しやすい環境が整います。
これこそが人口ボーナスのメカニズムです。
これでアジアの経済発展の3分の1が説明できてしまうそうです。
人口という観点から経済を見てみるとおもしろいですよね。
やがて訪れる高齢化
しかし人口ボーナスは永遠に続くわけではありません。
ベビーブーム世代が働かなくなったら、まさにもうそのボーナス期間は終わってしまいます。
そう、そしたら次にその社会に訪れるのは高齢化社会です。
日本でもさんざん少子高齢化と言われていますが、強制的な人口抑制をおこなって人口ボーナスを発動している以上、高齢化社会の到来は免れないのです。
何事もドーピングには反動がつきものということでしょうか。
日本だけでなくアジア全体で少子高齢化は社会問題です。
そして、解決する、というよりはどう向き合うかが大切な社会問題です。
こうやって人口という観点から見れば、少子高齢化問題も新しい見方ができそうですね。