【書評】これからの世界はどうなる?世界の知識人たちが予想する政治経済~エマニュエル・トッドほか『世界の未来-ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本主義』①
今回紹介するのはエマニュエル・トッドほか『世界の未来-ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本主義』(朝日新書)です。
本書は世界的な歴史家・人口学者であるエマニュエル・トッドをはじめ、現代最高の知性と呼ぶにふさわしい計4人の学者たちによる講演やインタビューをまとめたものです。内容はタイトルからも分かるように、昨今の民主主義や資本主義の動向・行く末についてです。
今回は前半のエマニュエル・トッド氏とピエール・ロザンヴァロン氏の講演・インタビューに関して紹介していきます。
なお、ここでの話は日本に限ったわけでなく、世界全体、とりわけ先進国でおこっていることだとうことは念頭に置いておいてください。
エマニュエル・トッド「私たちはどこにいくのか」
要約
- トランプ大統領当選やイギリスEU離脱は民主主義の再登場である
- 高等教育がだめになり、エリートが批判精神を失っている
- 国ごとに異なる家族システムによって民主主義の形も国ごとに異なる
- 日本は文化の革命が必要
民主主義ってなんだろう
トッドの氏の見解で非常に面白いのは各国の家族の形態が民主主義の在り方に結びつく、というものです。
どういうことかというと、例えば日本の場合、直径家族の社会(子供のうち一人が結婚して、夫婦で親の家にとどまり、2,3世代の夫婦で生活共同体を形成する社会)になるそうですが、その場合は権力をとりあうことにあまり関心をもたないそうです。だから自民党が政権を握ることにもつながる、と主張しています。
トッド氏からすれば、イギリスEU離脱だとかそういうことは民主主義が機能している証拠で、たしかに大変な道ではあるだろうが、よっぽど他の国よりも民主主義は機能していると言います。
自分たちで選んだ道だったら文句は言えないですもんね。
そういう意味では日本はどうも自分たちで選んでいる、という感じが感じにくい社会になっている気がしますね。
つまり民主主義というのは普遍的なものでなく、あくまで普遍的なものは民主主義の制度である、ということです。
自由とか、選挙とか、そういった制度に普遍性はあっても、その具体的な実現方法は国ごとに異なるということです。
よく考えてみれば、法体系や政治システムだってその国の歴史や文化を反映しているのだから、民主主義の在り方が国ごとで違うのは当たり前かもしれません。
ただただ欧米の国の政治のやり方を見て、安直にあっちのほうがいい、と思っても実は日本には合うものではなかったりするので気を付けなければいけませんね。
ピエール・ロザンヴァロン「崩壊する民主主義」
要約
- 選挙で選ばれた代表が代表として機能しなくなっている
- 民主主義の単純化が進んでいるが、これから複雑になっていかなくてはならない
- 民主主義は生きた経験でなくてはならない、選挙以外で声をあげていく必要性
選挙以外で、声を政治に届けていくこと
ピエール氏が言うのは今は選挙で選ばれた代表が機能していないから、民主主義を機能させるには民主主義を複雑にして、選挙以外の政治参加をしていかなければならない、ということでした。
選挙以外、というとデモとか街頭演説とかそういうやつです。
いまの日本でやるとちょっと遠い目で見られがちな気がします。
それだけ日本では民主主義が機能しなくなってきているということになるのでしょう。
選挙以外で声を届けていくことがもし本当に必要ならどうすれば今の日本で実現できるのでしょか。
正直無理、と言いたくなりますが、本当に変えたいならもっと教育から変えて子どものころから政治に参加する大切さみたいなものを浸透させていくしかないでしょう。
でもその教育を変えるのは、というと政府がどうしても中心になってしまい、その政府を変えるために選挙以外で民主主義を複雑化させていく必要がある、という堂々巡りに陥ってしまってしまうかんじがしますね…。
まとめ
今回はトッド氏とピーエル氏二人の文章を紹介しました。
主に民主主義について二人とも語っていて、現状に対してトッド氏は比較的楽観的なところがある反面、ピエール氏は悲観的な印象を受けました。
ただ、二人に共通しているのは、民主主義普遍的なものじゃない、と言っていること。
講演会の記録なので、こういう策がある、という具体的な話までには踏み込んではいませんが、これからの政治体制について考えるにはもってこいの一冊かな、と感じました(ただ日本語訳があまり上手くないのか、自分の語学力が足りないのか、少し読みづらいところもあった気もします)。
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